路地裏のアルバ3|変化するもの
この世には、“モテる者”と“モテざる者”がいた。
モテざる者アルバは、“モテる者”レオンに憧れ、弟子となる。
自分とモテる者たちの違いを諭されたアルバは、仕事を理由に自分を正当化するが、
レオンは同じ仕事をしながらも整った青年を静かに見せた。
アルバは初めて、自分の「仕方ない」が言い訳だったことを突きつけられる。
──市場を歩きながら、
アルバはずっと黙っていた。

頭の中に、
さっきの青年が蘇る。
同じ木箱を運び。
同じように汗にまみれている。
なのに、
自分とはまるで違って見えた。
レオンは何も言わず、
前をゆっくり歩いている。
その沈黙が、
落ち着かなかった。
しばらくして、
アルバがぼそっと言う。
「……めんどくさいですね」
レオンが少し視線を向ける。
アルバは続けた。

「爪とか、靴とか、髪とか」
「そんな細かいこと、ずっと気にして生きるんですか?」
アルバは吐き捨てるように言った。
「なんか……そこまでしてモテる者になりたくないです」
「もっとこう、特別な何かがあると思ってました」
「女の人を惹きつける話し方とか、一瞬で人気者になる方法とか」
「でも実際は、地味なことばっかりで……」
アルバは顔をしかめる。
「正直、そんなことするくらいなら、今のままでいいです」
レオンはすぐには答えなかった。
通りの店先では、店員たちが準備をしている。
その横を、酒臭い男がふらつきながら歩いていった。
服は汚れ、
髪は跳ね、
通りすがりの人が少し距離を取る。
男は気づいていない。

気づかないまま、
また大声で笑っていた。
レオンが静かに言う。
「君は、ああいう人と仲良くなりたいかい?」
アルバは即答した。
「……嫌です」
「どうして?」
「どうしてって……」
アルバは言葉に詰まる。
レオンは前を向いたまま続ける。
「口が悪く、愚痴ばかりの人とか、
約束雑な人もそうだな。」
「そういう人とずっと一緒にいたいかい?」
アルバは、
路地裏の男たちを思い出した。
誰かを馬鹿にする笑い声。
酒の匂い。
すぐ怒鳴る声。
レオンは言う。
「人って結局、
“不快感が少ない人”のところに残るんだよ」

「恋愛でも、友達でも、仕事でもね」
アルバは黙ったまま歩く。
レオンは続ける。
「別に、一人で生きるならそれでもいい」
「髪がボサボサでも、靴汚れていても、
誰も気を使わなくて済むからね」
「でもね、人と関わって生きるなら、身なりを整えること」
「それって、特別なことじゃなくて相手への礼儀なんだ」
アルバは俯く。
レオンは責めていない。
説教もしていない。
ただ、当たり前のように話している。
それが逆に、
アルバには刺さった。
レオンは通りの先を見ながら言う。
「モテる者って、別にキラキラした人間じゃない」
「“この人といると嫌じゃない”を地味に積み重ねてるだけなんだ」
風が吹く。
アルバは、自分の爪を見る。
正直、まだめんどくさいと思っている。

誰かのために変われる人になれ

自分を貫いて生きた方が、楽だし、かっこよくない?

そう思う気持ちもわかるのぉ。
じゃがな、本当にそうかの?
アルバはレオンの話を聞いて、
「そんな細かいことまでしたくない」と言いました。
実際、爪を整えたり、
靴を磨いたり、
身だしなみに気を遣ったり。
どれも地味で面倒です。
だからアルバは、
もっと特別な方法があると思っていました。
一瞬で人気者になる方法。
一瞬でモテる方法。
でもレオンが教えたのは、
そんなものではありませんでした。
変化=成長
アルバは、
「そんな細かいことまでしたくない」と言いました。
でも本当に嫌だったのは、
爪を切ることでも、
靴を磨くことでもありません。
自分が変わらなければならない現実でした。
人は、変われないのではありません。
変わる理由よりも、
変わらない理由を探してしまうのです。
忙しいから。
時間がないから。
今さらだから。
自分はこういう人間だから。
そうやって納得できる言い訳を並べる方が楽だからです。
アルバも同じでした。
本当はモテる者に憧れている。
本当は変わりたい。
それなのに、
「そんなことまでしたくない」と言ってしまった。
なぜなら、努力する前に諦めた方が傷つかないからです。
変わることは、自分を捨てることじゃない

自分を曲げてまで生きるのって、なんかダサいよ。

そう思う者もおるじゃろうな。
じゃが、それは少し違うんじゃ。
私たちは毎日、誰かと関わりながら生きています。
友達。
恋人。
家族。
職場の仲間。
その中で、
時間を守る。
身だしなみを整える。
相手の話を聞く。
言葉遣いに気をつける。
そんなことをするのは、自分を捨てるためではありません。
相手を大切にするためです。
自分の好きなように生きるのは自由です。
ですが、
人に好かれたい。
人と良い関係を築きたい。
誰かと共に生きたい。
そう願うなら、
「これが自分だから」だけでは通用しません。
レオンが教えたかったのも、モテる技術ではありません。
誰かのために自分を整える姿勢です。
そして、
モテる者とモテざる者を分けていたのも、
才能ではなく、その姿勢の差だったのです。
まとめ

変わることは負けではない。
誰かを大切にするための覚悟じゃよ。

なるほどなぁ……
アルバが越えなきゃいけなかったのは、
爪でも靴でもなくて、
「このままでいい」って思い込みだったのか。

うむ。
人に選ばれる者というのは、
誰かのために変われる者なんじゃよ。
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路地裏のアルバは全4話のシリーズなのじゃ。
今読んだ物語は3話目じゃよ。
